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10万年後の安全

 映画『10万年後の安全』(Into Eternity)、ようやく観ることができました。
少し演出が濃すぎて、それがちょっと邪魔な気がしましたが、素材自体が巨大な力をもっているため、これまでにないドキュメンタリー映画の新境地を切り開いた作品だと感じました。
フィンランドの核のゴミの埋蔵施設(オンカロ:「隠された場所」という意味)とその10万年にわたる地下処分プロジェクトに関わる人々を撮りつづけた作品。
「遠い未来にこれを見つけた<君>は、我々の文明をどう思うだろうか」と問うマイケル・マドセン監督の言葉が心に残りました。
地下500メートルの世界と、10万年という時間の単位、放射線で青白く光るプールの水などを見ていると、まるで太古の夢の中に降りてゆくようでした。「Into Eternity」(永遠の中へ)という英文タイトルのほうが、作品をよく表していると思います。「文明」ということばが、本当にリアルに響く世界が現出していました。
「地上は常に不安定で、(核物質の貯蔵に)適さない」という言葉も、胸に突き刺さりました。
私たちが生きる「地上」は、予測が困難な不安定な空間なのです。当たり前のことですが、改めて「そうだなあ」としみじみ思いました。
まさにリアリズムに基づいて、フィンランドの人たちは、約18億年安定している地層を選んで、核廃棄物処分のための10万年のプロジェクトを立ち上げました。そのような想像力が今の近視眼的な日本社会に存在するでしょうか。
賛成と反対の立場をこえて、原子力発電を選択するということは、今とりあえずの欲望や必要を優先して未来に根本的な矛盾を引き渡すことを選択することに他なりません。まずはその動かし難い「事実」から議論を出発させてみることが必要かもしれません。

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