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グアム――「シャゲキドウデスカ?」

初めてのグアム訪問での雑感です。

まず、「沖縄にそっくり」、というのが偽らざる第一印象でした。レンタカーで島を一周し、北部のアンダーソン米空軍基地も、南部の戦跡も訪れましたが、美し過ぎる海に、それとはまったく対照的な〈戦争〉の臭いがするという点が沖縄を彷彿とさせました。上の写真は南部のサンゴ礁の海。下の写真は北部の米空軍基地です。金網で仕切られた敷地内の奥にはガメラレーダーも見えます。

戦跡もいたるところに残っていました。下の写真は、観光客でにぎわうチャモロ・ヴィレッジのすぐ裏にあった日本軍のトーチカ跡です。1941~44年、グアムは日本軍に占領され、「大宮島(だいきゅうとう)」と呼ばれていました。時間がなく確かめることができませんでしたが、グアムに来る前にある詳しい放送人にきいた話では、日本軍「慰安婦」は、ここグアムにも確かに存在したといいます。

グアムはそもそも、空港に降り立った瞬間から、戦争の臭いがします。下の写真は、空港に展示されていたものですが、イラクやアフガニスタンの戦争で殉職した女性兵士たちの写真です。空港の同じフロアには、これと同じたくさんの「英雄」たちの写真が展示されています(表示には”The Fallen Brave of Micronesia”とありました)。しかしグアムは、国連が指定しているように依然として「非自治地域」のままで、「準州」とはいえ、アメリカのいわば「植民地」なのです。これらの戦争で亡くなっていった兵士たちがたとえ志願兵だったとしても、言うまでもなく、彼女/彼らが依然としてアメリカ本土の市民と比べて同等の地位であると言うことはできません。

「植民地」…。そう、グアムでもっとも浮かんだテーマは、「コロニアリズム」でした。
スペインに支配され、アメリカに支配され、日本に支配され、そして再びアメリカに支配されたグアムの歴史。下の写真は、島の南西部の海岸にあったスペイン人たちの植民の痕跡、Herizo Combentoです。
 

グアムの先住民はチャモロの人々でした。しかし、ガイドブックにチャモロ語が紹介されていたものの、どれもスペイン語とそっくりで驚きました。本当にオリジナルなチャモロ語ができる人はもうほとんどいないということです。
この建物の中で働いていた、チャモロ人のA.T.さんにお話をうかがったところ、彼のおじいさんも、かつて日本兵に殺されてしまったと言います。ここ々の村では、日本軍に反抗した15人が殺害されたとも教えてくださいました。 お応えする言葉がありませんでした…。
そして、先述のチャモロ・ヴィレッジのように観光地化された「チャモロ」ではなく、本当の「チャモロ」の痕跡を求めて、グアム大学にも足を運びました。下の写真のように、グアム大学は小規模ですが、きれいな大学でした。

そして、学生に道をききながら同大「ミクロネシア地域研究センター」を訪れると、そこで運よく、グアム脱植民地化委員会の中心メンバーであり、チャモロ研究のフロントランナーでもある、グアム大のマイケル・ベバクアさんにもお会いすることができました(下の写真)。彼もまた、チャモロの子孫です。

そして、グアム・リゾートの中心地、タモン。
グアムといえば、タモン。つまり、私たち日本人が典型的に思い描く場所なのですが、このようなリゾート地は、実はグアムのほんの一部なのです。
下の写真は、私が泊まったホテルの目と鼻の先の小さな広場ですが、例の通り魔殺人が起こった場所です。いつも日本人観光客であふれている、あの「ABCストア」の真ん前です。
多くの花が手向けられていました。

犯人の男は、現在精神鑑定にかかっているようですが、それにしても彼は一体何に対して殺意をもっていたのでしょうか。亡くなられた方々も、その遺族も、単に「彼は精神異常でした」では納得がいかないと思います。被害者はなぜ死ななければならなかったのか、私はそこに佇みながら、そのことをずっと考えていました。彼の殺意は、世界の金持ちのためにある、その人工的なリゾート空間全体に向けられていたのではなかったか…。
夜、タモンの繁華街を歩くと、少し外れるだけで寂しい空間が開けます。
ふと、「シャゲキドウデスカ?」
と、道端の男に、訊かれます。
何だかとてつもなく悲しい気持ちになります。
先住民と思しき彼が、遠く日本から来た私に、「シャゲキドウデスカ?」と日本語で訊くという現実に、打ちのめされそうになります。そこにいたるまでに、いくつもの植民地化の歴史があったのか。
下の写真は、もうつぶれて廃墟になってしまった観光客相手の実弾射撃場です。
月がきれいでした。

そして旅の最後の写真(下)は、夕暮れのビーチです。
帰国しても、すべての人間たちを平等に包むグアムの海、そのエメラルド色の透明な水と、静かな波の音は忘れがたく、ただそれに会いに、また訪れたいと思うのでした。

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