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中東訪問から考える ② イラク アルビル――「豊かさ」について

多忙にまかせてまたずいぶんと間が空いてしまいました。間が空くと良いことと悪いことがありますが、悪いことは、旅の細部を忘れてしまうということ、あるいは、記憶のねつ造が起こるということです。これについては、旅の間に手帳に書き込んだメモを読みながら、また写真を手掛かりにしながら、何とか補うことができればと思います。一方、良いこともあります。それは、経験が濾過されて、自分にとって大切なものだけが明らかになるということです。時間が経つと、当時は価値のなかったように思ったことが、実は自分にとって価値のある経験であったことなどを再発見できます。
ドバイの次に訪れたのは、目的地のイラクです。イラクといっても、未だ戦火のやまないバグダードなどには入れないので、アルビル(ERBIL)というクルド人自治区の中心都市に滞在しました。そこで、石油産地としても有名なイルクークで活動する現地NGOの方々への聞き取りを行ったのでした。イルクークもまた、日本人が入ることは非常な危険を伴うため、今回は訪問を断念しました。申し遅れましたが、今回の旅は、日本国際ボランティアセンター(JVC)の方々との共同のプロジェクトによるものでした。これを契機に、JVCの方々とイラクとは、長いおつき合いになりそうです。
さて、文明について考えるこのブログとしては、まず、アルビルの「豊かさ」について触れます。
下の写真は、旅の間何度も飲んだお茶です。基本的にムスリムはお酒は飲まないので、これを飲みながら仲間と話し込むのです。飛行機では「Black Tea」と言っていましたが、色の濃い紅茶です。砂糖をたくさん入れて飲みます。これは病みつきになります。

そして次は、旅の途中で食べた料理の数々。



基本的にケバブのような料理が多く、メインはお肉とお米(炭水化物)なのですが、イラク研究者の酒井啓子さんが指摘するように、イラクはお米が本当においしい。長粒米ですが、ほんのり甘いのです。
最後の黒いものは、「デーツ」です。これは、モスクを訪問したときにごちそうになったのですが、本当においしいデーツでした。高級アンの和菓子という感じでした。これも有名な事実ですが、スイーツはとても充実していました。下から3番目は、屋台のお菓子屋さんです。下から2番目は確か「クナーファ」といったと思いますが、本当においしかった。いずれもはちみついっぱいのリッチなお菓子です。
気がついたのは、人々が普段から集い、のんびり話し合うためのさまざまな場や機会があったということです。下の写真は、初体験の水タバコ(上)と夜の街(下)ですが、男たちは昼も夜も社交の場をもっていて、ひまわりの種を食べながら、たばこを吸いながら、お茶を飲みながら、永遠と話しているのです。女性が家に閉じ込められているのには驚きましたが、とにかくそのような濃密なコミュニティの存在こそがアルビルがもつ「豊かさ」の本質であると思いました。

そして、人々の集いの場所という意味で欠かすことのできないのは、モスクです。
下の写真は、シタデル(CITADEL)という旧市街の中にあったモスクの様子です。突然の訪問にもかかわらず、イマーム(お坊さん)は本当に歓迎してくださいました。モスクの歴史を語り、先ほどのおいしいデーツをふるまってくださいました。飢饉が訪れた際に、自分の食事を分け与え餓死したイマームの話など、彼が語る歴代のイマームの話は心を打つものでした。イマームの権威とは、民衆の尊敬の上に成り立つ権威です。宗教機関であるだけでなく、貧しい人や弱者の避難所でもあり、教育機関でもあり、地域の自治会でもある。コミュニティのあらゆる機能がつまっている場所がモスクなのです。


最後の写真は、宿の近くのモスクを訪れた際のものです。モスクはすべての人間に開かれています。神の前ですべての人は平等。外国人にも分け隔てなく開かれています。カメラを向けると、くったくのない少年の顔。私たちがこのイスラムの伝統に学ぶことはきわめて多そうです。

 

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