「希望の政治学読本」第4回目です。
和田武『再生可能エネルギー100%時代の到来』(あけび書房) 1400円
「再生可能エネルギー100%社会」。エネルギー問題に多少は詳しい(と自分では思っている)人ほど、まずそんなことは「非常識」だと思うかもしれない。この国では、「原子力ムラ」、「安全保障ムラ」などのさまざまな「ムラの常識」が支配していて、そこから逸脱する議論はハナから相手にされない。しかし、その「常識」の信奉者たちの多くは、世界には他にもたくさんの「常識」があるという「常識」を理解できない。それゆえ、新時代の「常識」は、常にムラの外の住人に聞くしかないということになる。
本書の著者も、元はムラの住人だった。しかし、そこから抜け出して新しい「常識」を見出し、訴え続けてきた。このように“転生”した人の言葉は聞くに値する。近い将来、再生可能エネルギーは間違いなく安価なエネルギーになる。デンマークは2050年までに再生可能エネルギーを100%、ドイツは電力の80%以上にする計画である。パラグアイはすでに3年前に149%を達成している。このような再生可能エネルギー中心のエネルギー政策は、一部地域の例外ではない。気候変動問題や経済雇用問題、安全平和問題をリアルに見据えた上で到達した、世界の趨勢となりつつある。
本書によれば、このエネルギー社会のパラダイム・シフトを支える主役は、政府や大手企業というより、そのあり方を決める市民や自治体である。これからのエネルギー社会は、中央集権型=大規模依存型から、地域分散型=小規模自律型へと移行する。一国のエネルギー政策も、ドイツの「100%再生可能エネルギー地域」プロジェクトのように、それぞれの地域の事情に見合ったミクロな実践が基盤となるだろう。
2004年まで太陽光発電の普及量が世界一だった日本、そして世界有数の豊かな再生可能エネルギー資源を誇る日本が、今なぜ世界とは真逆の道を歩んでいるのか。本書は小著だが、このような最重要の争点を包括的に取り上げ、新時代の「常識」を分かり易く提示する。