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シェークスピアの効用【ブログ再開します!】

前回の投稿は、2021年の5月なので、もう1年半もサボってしまいました…。本当に久しぶりに投稿します。この間「〈文明〉の新しいかたちを求めて」、さまざまな活動を実施し、また文章も書いてきましたが、実はブログの形式が新しく変わってしまい、どうにも扱い方が慣れず、つい投稿が億劫になってしまっていました。でも、今日から再開したいと思います。

以下は、私が代表を務める「おらってにいがた市民エネルギー協議会」で2週間に1回必ず書いている「おらって便り」の文章です。もうNo.77になったので、けっこう書き溜めてきましたが、今回はその最新の77番目の文章です。現在の〈文明〉論的な危機の中で、何がそれを「突破」する可能性になりえるのか。今回は、シェークスピア的な〈知〉の可能性について少しだけ書きました。

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私が勤める大学のゼミの卒業生で、職場環境の悪化で苦しむ学生がいるというので相談にのりました。これは良くあることです。長年学生の相談をききながら、年を追うごとに、多くの地方企業の経営が窮しているのではないかと肌で感じます。愚政によって日本全体が沈没しつつあるので、地方も例外というわけにはいかないでしょう。しかし、大学の教員ごときに何かができるわけではありません。それで、ある時ふとひらめいて、シェークスピアを読む読書会を開くことになりました。

ハムレット、ロミオとジュリエット、マクベス、リア王、リチャード三世、オセロー、冬物語、ヴェニスの商人など、常に4~5名の少人数でどんどん読み進め、今ではシェークスピア全作品の「制覇」を目指しています。

もちろん、卒業生たちの現実の仕事には、古い戯曲など「何の役にも」たちません。けれども、仕事にまったく関係がない本を読んで、アレコレと友人と語らうことこそが、厳しい娑婆(しゃば)の現実を乗り越える力になります。シェークスピア作品には、善人も悪人も、想いを遺した亡霊までもが出てきます。そこには、この人間世界の喜怒哀楽がすべて詰まっているようです。そして、そういう歴史的な広がりをもった物語の中で彷徨しているうちに、「人生もまたすべからく芝居」という、達観した気持ちも湧き上がってくるようになります。

私たちは「物語」の中で生きています。そのストーリーがどんなものであれ、一人ひとりの人生に「物語」はあります。そしてその自分の「物語」をみごとに演じきるには、他者や世界にあふれる無数の「物語」についても知っておくことが役に立つでしょう。現代の最大の問題のひとつは、個々の「物語」がそれぞれ孤立していて、他の「物語」と分断されていることにあると思います。分断されてしまうと、個々の「物語」はなんと貧相になってしまうでしょうか。

個々の「物語」が世界とつながっていることを学ぶには、His Story(彼の物語)、すなわち、History(歴史)を学ぶことが近道です。そしてそれこそが、大学教育の目的のひとつにほかなりません。学べば学ぶほど、自分の小さな囚われから解放され、自由に生きることができるようになる。読書会に集まる若者たちは、その真の喜びを忘れずにいることで、閉塞していく現実社会の中で完全に溺死することなく、生活の現場から、少しずつ新しい世界を創造していくことができるようになります。

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