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中国での列車事故を考える

 「中国鉄道省が、北京―上海間の高速鉄道の試運転で車両の深刻な不具合を把握し、開業前の5月末に内部会議で報告していたことが分かった」――『朝日新聞』 2011年10月2日
先日(9月27日)上海地下鉄でも事故があったばかりですが、それ以前にもトラブルが多発していたといいます。史上に例をみない速度で経済成長を遂げる中国は、多少の安全を犠牲にしても、近代化と発展を優先して猪突猛進しているように見えます。
やがて電力も徹底的に不足するでしょう。そうすれば(現行の計画通り)、無数の原子力発電所が東側の海岸に林立する日が近いかもしれません。
何というか、これはかつての日本を見ているようです。ミナマタは、「最大多数の最大幸福」の論理の下で、海を汚すことの危険性より、工場を止める損害の方を重く見た当時の社会が引き起こしました。まずは「今」豊かになろう、という切迫した思いが、当時の主要な潮流だったと思います。巨大なダムや発電所が次々とつくられ、その結果われわれの生活も「豊か」になりました。しかし、その過程で事故や公害も無数に起こりました。また、それによって生まれた被害者は常に「少数派」であったため、その多くは「多数派」の意思の下で泣き寝入りさせられてきました。
けれども、ナショナルな発展が、地域や個々人の発展とまったくイコールである、という「神話」は、もうそのメッキがはがれてしまいました。フクシマは、日本のいわば「60年体制」のひとつの結末だったと言えます。少数者の声に耳をかさず、猪突猛進する巨大な組織がどのような末路をたどるのか、中国で政策決定する人々は、日本から多くを学ぶべきだと思いますし、また日本はそれをしっかり教えてあげるべきだと思います。
日本よりはるかに大きな中国がこの列車事故を忘却し、かつての日本のように今後も「盲進」を続けるなら、もうひとつのフクシマ、あるいはそれ以上の悲劇を、私たちが経験しなければならなくなる日も覚悟する必要があるでしょう。
確信をもってそう思います。

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