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人間と世界をつくりなおすために            ――ソルムンデハルマンの神話――

 今日、面白い会合に参加し、そこで久しぶりに姜信子さんとお会いすることができました。
そのユニークな会合は、新潟大学人文学部の企画で、姜さんの語りと、浪曲師、玉川奈々福さんの浪曲を聴くというものでしたが、語る―聴くということに潜む根源的な可能性を再発見する、とても充実した内容となりました。
さて、その姜さんの話の中で、韓国の済州島にずっとあるという「ソルムンデハルマン」の神話を知ることができました。この話は、創造神「ソルムンデハルマン」が息子である500人の将軍を貧しい島で養うために自ら大きな鍋の中に入ってお粥になった、そしてそれを知らずに食べた500人の息子たちが真実を知ると、ショックで皆石になってしまった、というものです。だから済州島は今でも岩ばかりだということなのだと思います。
この話はきわめて意味深です。この神話に基づいて、白雲哲(ペクウンチョル)という一人の男が、「人間と世界をつくりなおすために」、島中から巨石を集めて「石の公園」をつくったということです。済州島は2度訪れたことがありますが、この「石の公園」は未だ訪れたことがなく、またその話も初めて知ったので、不明を恥じました。姜さんによれば、彼は、この創造神の名前を、勝手に「設問(ソルムン)・大(デ)・母(ハルマン)」と解釈し、「4・3事件」の歴史的悲劇を踏まえ、この「人間と世界をつくりなおす」事業をひとりで成し遂げたということです。
済州島にある無数の石たちは、そのどれもがかつて創造の母に最大の愛と祝福を受け、しかしその身体を食らった悲しい経験をもつ石たちなのだとすれば、その石たちの声なき声に耳を傾けるしか、この島の本当の経験は聴き遂げることができない…。私はそう解釈しました。
そして、この歴史の周辺にうずもれてきた無数の死者の声を甦らせることを通じて、根源から、「人間と世界をつくりなおす」ことができるかもしれない。いや、それしか方法がないのではないか。
たとえば、三陸の、東北の、蝦夷の未だ聴き遂げられていない無数の死者の声を、瓦礫や岩くれの中にどこまでも聴き遂げる身体だけが、存在としての<植民地>を内側から克服することができる…。つまり、世界がつくりなおされるということは、人間がつくりなおされるということと同義である…。
ソルムンデハルマンの神話は、「3・11」以後の私たちの創造力に直接的に働きかけてきます。
姜さん、いつもながら大切なことを教えていただきました。ありがとう。

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