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希望の政治学読本 ⑦

『日刊ゲンダイ』の書評連載、第6回目まではブログに掲載しましたが、7回目~も載せておきます。

ジーン・シャープ『市民力による防衛』(法政大学出版局) 3800円

「おまかせ安全保障」からの脱却

よく、「北朝鮮や中国が日本に攻めてきたらどうする!」と問われることがある。どうなるかよく考えてみる。もし何もしなければ、占領されるかもしれない。けれども占領後、人口1億人以上の先進国をどのように支配するのか。侵略者はまず、複雑な官僚機構を動かすために、日本語をしっかりと勉強しなければならないだろう。そして何より、自分たちの支配が1億人以上の国民にごく正当なものであることを信じ込ませなければならない。

冗談のような思考実験であるが、現代の安全保障問題のある本質を浮き彫りにしている。「敵」の攻撃を「抑止」するための力の中で、軍事力は依然として大きな役割をもつのかもしれないが、それ以外にもたくさんの政治的・社会的「抑止力」が存在する。本書は豊かな歴史的経験の中から、市民の非暴力的な力が、社会にとっての不当な脅威を十分にはねかえす可能性があるという事実を導き出す。注目すべきは、この脅威とは、何も外国には限らないということである。歴史的によく考えれば当然だが、クーデターなどによる独裁者や自国軍、警察もまた、私たちの脅威となりうるからだ。

著者によれば、準備され訓練された「大規模な非協力と大規模な公然たる拒否」によって、支配権力を「餓死」させることができる。たとえ一時的な弾圧があったとしても、それを新たな連帯や抵抗の力とする「政治的柔術」によって、逆手に取ることもできる。軍事力に頼らない市民による安全の実現は可能なのだ。

このような議論に、「現実を無視した甘い議論だ」、あるいはまったく逆に、「非暴力論にしてはあまりに戦略的だ」という反論がありうる。しかし本書を読めば、著者の構想が長期的にはいかに現実的なものであるかがわかるだろう。

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