また本当に久しぶりのブログ執筆です。更新がなされないものの、意外にも全国のどこかで読んでいただけることもあるようで、このブログがきっかけでいくつか講演も依頼されるようになりました。<文明>の新しいかたちを求めて、日々の思考の切れ端を、途切れながらも地道に書き記していこうと思います。今日は、地方金融の話です。
先日、私が関わっている新潟の市民エネルギーの試み(おらってにいがた市民エネルギー協議会)が保有する子会社(おらって市民エネルギー株式会社)が、地元の第四銀行から、2億4600万円の融資を受けることが決定しました(詳細は、https://www.daishi-bank.co.jp/release/pdf/160120-3293.pdf)。現在建設中の約1000kwの太陽光発電事業に対する融資です。
もう公表しても良いと思うのですが、なんと連帯保証人もパネルの担保も取らない融資で、15年間1.85%の固定金利です。
第四銀行は、全国の地銀の中でもおそらくもっとも「保守的」な銀行のひとつであると思いますが、その意味では「歴史的快挙」といっても過言ではないと思います。第四銀行の歴史のみならず、おそらく新潟の金融の歴史の中でも画期的な出来事であったと思います。
もちろん、現在危機に瀕する地銀が今後も地域で生き残っていくためには、地域にお金が循環するこのような事業に積極的に関与していく姿勢が不可欠になっています。また、私たちの事業は、「パートナーシップ協定」による行政(新潟市)との包括的な協力関係もあり、事業の公益性が高いことも、融資の大きな追い風になったと思います。
しかし、この間の経験で学んだことは、このような金融やお金の世界も、実は「数字」だけでなく、それよりも「人」のファクターが決定的に重要であるということです。銀行融資担当の若く優秀なメンバーたちは、事業の可能性や理念を理解すると、これまでに例のない複雑な案件であるにもかかわらず、審査部に対して粘り強い交渉を繰り返し行ってくださいました。私見では、彼らは通常の仕事よりは半歩か一歩ぐらいははみ出しながら、事に当たっていたと思います。最終的に私たちは、「銀行担当者とお客様」という関係よりも、若干「同志」ともいえるような関係で事を成したという実感もありました。
まだご本人たちに確かめたわけではありませんが、「新潟(の未来)のため、一肌脱いでください」、という呼びかけに、彼らも応えてくれたのだと思います。この市民エネルギーの活動全般に言えることですが、このような銀行の方々のみならず、市役所の職員の方々、地元施工業者の方々、マスメディアの方々などなど、どの職業人も「自分が生活し、子どもや孫が生きる地域のために」、半歩か一歩、自分のルーティーンを少しだけはみ出して協力してくださっています。この「ほんの少しだけはみ出した人々」の連鎖こそが、「おらって」の推進力の秘密であると感じます。
タイトルにある地方金融の「革命」というと少々おおげさかもしれませんが、私が経験した小さな革命の大きな可能性について、書き記しておこうと思います。地方で生み出された財やお金が地方を真に豊かにするために循環する構造をつくりだすこと。そのためには、これまでのように中央や上からの既定路線ではなく、下から生成する小さな新しい可能性に賭ける勇気をもつことが必要です。そして何より、それを推進する力は、最終的には個々の「人」に他ならないという真実を再確認することが大切だと思います。
地方金融の小さな革命
2016年1月25日